池谷 成就

 ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。
 「かわせみ倶楽部」主宰。



- あこがれの支笏湖 -


 でっかい北海道のでっかい湖支笏湖。そしてでっかいトラウト。
 そんな噂を聞いてやっと乗り込んだ新千歳空港。レンターを借りてまずは市内観光を済ませてしまった。あとは釣るだけのシチュエーションを作り出し、いよいよ支笏湖のトローリングとなったのだった。

 今回の遠征釣行は、本当のところ情報を下さった競走馬関連のお仕事に付く藤澤氏の「池ちゃんなら釣るよ」の 3 年前からの重い重〜い期待とプレッシャーは、そろそろ片付けなくてはならない宿題のように毎週の中禅寺湖通いでも心のどこかに引っ掛かっていた。必然的に大きなルアーを探すようになり、それを納得のいくように使いこなすため、今年の中禅寺湖のトローリングは、まるで支笏湖のシミレーションのようなものだった。

 ところが、中禅寺湖で試しに使ったラパラ F18 とサラナ 147MAXF は期待以上にレイクトラウト 75cm とブラウントラウト 60cm の結果を出してくれていた。こうして支笏湖で使うルアーは決まったのだった。


 僕のボスにあたる平本氏に、釣り雑誌 Gijie の連載の湯煙アングラー釣行記のいつもの取材がてらと北海道遠征を告げる。この時点で表面的にはのんびりとした北海道観光を意識したつもりだったが、内心一発かましてやるぞと心の炎がメラメラと燃えさかり、行程中 2 日間を予定していたサーモンフィッシングの道具をトローリングタックルに変更して望んだ。

 しかし、実際に支笏湖畔に着いたとたんその大きさに唖然とし、ちょろっと弱気の虫が出る。皆が口を揃える「荒れると怖いよ!」の意味がはっきりと判ったからで、「いいや 3 日で 1 周してポイントだけ見て来よ。」
 結局初日の午後は丸ボウズ。本当に湖の流れ込み 2 本を見たに過ぎなかった。


 2 日目は早朝から出船。とりあえず昨日のポイントの繋ぎとして、対岸にあたる風不死岳(ふっぷしだけ)の湖岸を目指すが遠いのなんのって。湖を横断する形になるのだが走れど走れどポイントに着けない。ボートのエンジン ( ホンダ 7.5ps ) 全開で 40 分は走った。

 早速ラパラ F18 でトローリングするが 3 時間は何もなかった。
 始めての湖の攻略は流れ込みが大きなキーポイントになるが、支笏湖の最大の流入河川となる美笛川がやっと見えた時だった。ほとんど釣れないトローリングに飽きてしまい沖合 300m を移動中に釣れてしまったのがブラウントラウト 42cm 。これで湯煙アングラーは丸駒温泉を取材すれば連載は何とかなる。ホッと胸をなで下ろすが、この時始めてランディングネットを忘れた事に気付く。



 その後もポイントらしきところをトローリングすものの湖が荒れ始め撤退。一旦ボート場に戻りレンタカーの中から風が収まるのを見ていて眠ってしまった。

 丸駒温泉旅館にチェックイン。しかし、ロビーから見る湖面はやや落ち着きを取り戻しはじめていたので、急遽夕方のワンチャンスに賭けることに。
 これが大きな自信に繋がる事になった。小さなワンドを追波を受けながらドン深の湖岸ギリギリをトローリングし、魚探に映った水中の尾根を岸側から沖に抜ける時にもの凄いアタリ。残念ながらフッキングには至らなかったが、追波によるこのスピード、この時始めて投入した秘密兵器サラナ 147MAXF 、あのアタリ方にしてリーダー 16lb(山豊テグス トラウトファイター)。よし明日はこれで勝負と自信が戻ってきた。「見えたり支笏湖」とすかさず同船の妻にわめいてしまった。


 明朝、午前 4 時 30 分出船。ランディングネットも借りシュチエーションは整った。が、やや波が強く予定のポイントに行けず、まったく反対側になる昨日と同じポイントの美笛川バックウオーターから、帰りの方向となるオコタンキャンプ場を目指す。

 午前 6 時 30 分魚探にアメマスらしきのおびただしい魚群上を越える頃だった。
 何かがじゃれつくような微かな感触をロッドに伝えてきた。瞬発的にエンジンのスロットルを上げ小魚が逃げまどうようにルアーを演出した。

 ヒット!!重い重いと感じる今までに経験の無いただ重いファイトも、レットコアラインを巻き取り、リーダーとの繋ぎ目がガイドを通り、ABU 7000 ハイスピード改に入ってくる。しかし、表層の温水帯を嫌がるように、重い主は水深 6m ほどから横に走る。ゆっくりと走る。時折フックを外そうとするヘッドシェイクの振幅の幅はこれまた重く激しく鋭い。それが僕には光の反射で見えなかったが、隣でカメラを構える妻の顔をちらっと見た瞬間、その青ざめた顔、体の奮えに巨大な魚である事に改めて気付かされる。そう思った瞬間から今度は僕の膝頭がガクガクと奮え始め、心臓はマイナスの鼓動を打ち始めた。しばらく続いた温水帯の攻防も一旦ラインを越えればこっちのもの。

 ゆっくりと浮き上がったきた魚体にネットの直径を合わせるも足りない。ランディング失敗。またしばらく沈黙の攻防が続く。今度は尾鰭の方から魚体に触れずゆっくりとネットの深さを使い頭部がスポッと入ったところで一気に船縁からずり上げる。頭部から入れようとするとルアーの余ったフックがネットに引っ掛かってしまい取り逃がす事が多いからだ。


 船縁に横たわった支笏湖のウルトラブラウントラウトの大きさ太さ重さにはビックリ。
 ワニのようにのたうち回る魚体も静かになったところでメジャーを充てると 96cm 。

 こんなブラウントラウト見た事無い。ボート場に戻り再検量。死んでしまった魚体は死後硬直後の若干の縮みもあり、全長 92cm 、胴回り 60cm 、重さ 11.20kg 。


 3 年越しの宿題もやり遂げ、再度旅館に戻ってからは旨い旅館の朝食をたいらげ、支笏湖と繋ぐ丸駒温泉のそぼ降る雨の露天風呂からは、東天に向いて合掌した。「藤澤さん宿題終わりましたー。」「堀ちゃんネット有り難う。」「小林君的確なアドバイス有り難う。」

 帰りの空港に噂を聞きつけて見送ってくれたオーシャン 21 宮ノ森店長の小川店長と一緒にホッケを平らげ、平本ボスに湯煙アングラー良い記事かけますよ。と伝えると、「もったいないから直ぐに Gijie に連絡取って特別枠を押さえろ。」との命令に、嬉しさがジュワと込み上げてきた。SMITH のフィールドスタッフとして、同社のルアーで釣れた事が何よりも嬉しかった。願わくば JGFA のオールタックルブラウントラウト部門が取れればよいが、通ろうが通るまいが、自分には金メダルを送ってやりたい。


10/10 スミススタッフ追記:

 この記事中のモンスター・ブラウンが、JGFA オールタックル部門ブラウントラウトの日本記録に認定されました。
 Congratulations !!  ( 認定証です )



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